CLO(物流統括管理者)とは?
ー 義務化の流れと、CLOを支える4PLの役割
近年、「CLO(Chief Logistics Officer/物流統括管理者)」という言葉を耳にする機会が増えています。背景にあるのは、物流業界を取り巻く急激な変化です。ドライバー不足、輸送能力の限界、荷待ち時間の長期化など、従来の延長では解決できない課題が顕在化しています。こうした状況を受け、政府は物流を「経営課題」として再定義し、荷主企業にも改善の責任を求める方向へと舵を切りました。その中核となるのが、「物流統括管理者(CLO)」の設置義務化です。
CLOとは何か
CLOは、企業の物流を経営的な観点から統括する責任者です。これまでのように、物流を運送会社や倉庫業者に任せるだけではなく、自社の経営戦略と結びつけて最適化を図ることが求められます。CLOは、輸送・倉庫・在庫の全体を俯瞰し、調達、生産、販売といった部門を横断して、コストとサービスを両立させる“司令塔”の役割を担います。
改正物流関連2法とCLO義務化の流れ
2025年4月に施行された改正物流関連2法(流通業務総合効率化法と貨物自動車運送事業法の改正)は、日本の物流構造を大きく変える節目となりました。この改正では、2026年4月から一定規模以上の荷主企業に対し、物流統括管理者(CLO)の選任を義務付ける方針が示されています。
これまでの物流は、運送会社任せの「外部委託型」が主流でした。しかし、ドライバー不足や「2024年問題」に象徴される労働環境の悪化により、物流の持続可能性が脅かされています。
政府は、荷主自身が物流全体の効率化・見える化を主導する仕組みを作るため、CLO制度を導入することを決定しました。
この義務化の対象となるのは、「特定荷主」と呼ばれる企業です。現時点では、年間の貨物取扱量がおおむね9万トン以上の荷主が該当する見込みで、製造業や流通業など、大量輸送を伴う企業が中心となります。対象企業はCLOを選任し、その氏名や役職を届け出る義務を負うほか、国が定める「物流効率化計画」の策定・報告も求められる見通しです。
この制度改正は、単なる行政対応ではありません。むしろ、企業が自社の物流を“経営資産”として再構築する契機といえます。CLOが自社の物流を可視化し、データに基づいて改善を進めることで、コスト削減だけでなく、サービス品質やESGへの貢献といった新たな価値創出につながります。
なぜ今、CLOが求められているのか
CLOが注目される背景には、企業の競争力を左右する「物流の質」があります。製品をどれだけ速く、安定的に、環境負荷を抑えて届けられるか――。この力が企業価値を決定づける時代に入りました。
また、消費行動の多様化やECの拡大により、在庫や輸送の需給バランスを取ることが難しくなっています。もはや物流は「現場の管理」だけでは対応できず、経営戦略と直結した意思決定が不可欠です。CLOは、こうした環境変化に対応し、物流を“コストから競争力へ”変える中心的な役割を担う存在です。
CLOの役割と期待される機能
CLOは、物流の最前線を把握しながら、経営の意思決定に必要なデータを集約・分析し、最適な戦略を描く役割を持ちます。輸送・倉庫・在庫の全体像を可視化し、ボトルネックを明確にした上で、全社的なKPIを設計していきます。
また、調達・生産・販売など各部門がそれぞれの最適化を目指すことで生まれる“ズレ”を調整し、全体最適を実現することもCLOの重要な仕事です。このプロセスでは、現場の知見だけでなく、データ分析や契約、IT、サステナビリティなど、幅広い知識とマネジメント力が求められます。
CLO導入で直面する課題
CLOの設置を進める企業がまず直面するのは、自社のロジスティクスを経営レベルで再設計する難しさです。従来の物流部門は、輸送・倉庫・在庫などの個別業務に最適化してきましたが、CLOにはこれらを統合し、サプライチェーン全体を俯瞰して再構築することが求められます。
課題の一つは、ロジスティクス戦略の不在です。多くの企業では、物流が「業務遂行」中心に運営されており、経営方針や市場変化を踏まえた中長期的なロジ戦略が明確に定義されていません。その結果、拠点配置・輸送モード・在庫政策などの意思決定が場当たり的となり、全体最適を阻む原因になっています。
次に大きいのが、組織体制と役割分担の問題です。CLOの構想を実行するには、調達・生産・販売など各部門との連携が不可欠ですが、実際には「物流は現場管理」「経営は別」という縦割り構造が根強く残っています。部門間の目標のズレ――調達はコスト削減を重視し、販売は在庫確保を優先する――が、サプライチェーン全体の効率化を妨げています。さらに、体制づくりを支える仕組みや人材の不足も、CLOが直面する現実的な課題です。新しい組織をつくるには、既存の業務フローや評価制度の見直しが必要となり、部門横断の権限設計や意思決定プロセスの整備が欠かせません。しかし、こうした改革をリードできる人材は限られており、現場の実情を理解しながら経営に提案できる“橋渡し役”の育成が急務です。
CLOは、物流を単なるコスト管理ではなく、企業の競争力を支える基盤として設計し直す立場です。そのためには、個別最適の積み上げではなく、全体を見通して動かすための仕組みづくりとリーダーシップが求められます。この難題をどう乗り越えるか――それが、CLO導入の成否を分ける鍵となります。
CLOを支える仕組みとしての4PL
CLOの構想を実行へと移すためには、その戦略を現場レベルで支える仕組みが必要です。そこで注目されているのが4PL(Fourth-Party Logistics)です。4PLは、物流業務を請け負う3PLを統合・管理し、物流全体の最適化を支援するパートナーを指します。
CLOが“経営と戦略の舵取り役”なら、4PLは“実行と改善のエンジン”です。データ分析やネットワーク設計、可視化基盤の構築、共同化の推進などを通じて、企業のCLO機能を外部から補完します。
SBS東芝ロジスティクスの4PLが果たす役割
CLOが担う使命は、単に物流を管理することではなく、企業全体のロジスティクス戦略を描き、実現することにあります。SBS東芝ロジスティクスは、その構想段階から伴走できる数少ない4PLパートナーです。当社は、物流の設計思想そのものを経営方針と結びつけ、“あるべきロジスティクス像”をCLOと共に構想するところから関わります。
たとえば、サプライチェーンの中長期戦略を描く際、輸送ネットワークの最適化や在庫拠点の再配置、製品設計段階でのパッケージ見直しなど、経営レベルでの判断が求められるテーマを議論し、その具体化に向けた戦略プランを提案します。
SBS東芝ロジスティクスの4PLは、戦略策定からマネジメント、オペレーションまでを一気通貫で実行できる体制を持っています。ロジ戦略(戦略層)から管理・マネジメント層、現場オペレーション層までを垂直に結び、“構想”を“実現”に変えるのが4PLの最大の強みです。
特に、以下のような領域でCLOを支援します:
- 中長期ロジ戦略の策定と実行計画の立案
- 物流組織体制・機能の見直しと再構築
- 物流ネットワーク最適化(拠点配置、輸送モード設計など)
- 物流費の構造改革と「聖域なきコスト削減」
- 共同配送・環境配慮型物流など新たな価値創造施策の企画推進
SBS東芝ロジスティクスでは、これらを単発の提案で終わらせず、CLOが掲げる戦略の“右腕”として、実行と改善を持続的にサポートします。構想段階のパートナーであり、成果を共に創り上げる実行者――それが私たちの4PLです。
CLO体制構築の第一歩として
CLOとしての体制づくりは、法令対応にとどまるものではありません。それは、企業がロジスティクスを「経営戦略の一部」として再定義する、変革の始まりです。
SBS東芝ロジスティクスは、単なる業務委託を超え、経営方針に基づくロジスティクス戦略の立案から実行までを一貫して支援できる4PLパートナーです。お客様の課題を現場レベルだけでなく経営視点から捉え、サプライチェーン全体の最適化を図ります。たとえば、物流ネットワークの再構築や在庫拠点の統廃合、輸送モードの最適化、製品設計段階でのパッケージ見直し(DFL: Design for Logistics)など、事業戦略と連動したロジスティクス構想の提案を行います。CLOが掲げる「理想の物流」を現実にするための戦略パートナー――それがSBS東芝ロジスティクスの4PLです。
また、コスト削減の視点でも、当社は「荷主視点」での改善提案を徹底しています。物流コストを単なる経費ではなく、利益構造を強化するための投資対象として捉え、保管・荷役・輸送の枠を超えた「聖域なきコスト改革」を進めています。
4PLの導入を通じて、企業は物流費の削減だけでなく、在庫や固定資産の圧縮、部門間の連携強化、人員再配置など、より本質的な経営改善を実現できます。
まずは、貴社の課題や目指す物流像についてお聞かせください。
私たちはCLOの皆さまと共に、貴社の事業戦略に最適なロジスティクスの姿を描き、実現まで伴走いたします。お気軽にご相談ください。




