3PLから4PLに進化させる3つのポイント
3PLだけでは解決できない物流課題が増加
必要とされる次なる一手は?
「煩雑なロジスティクスをアウトソーシングしたい」
「SCMの最適化によりコスト削減をしたい」
3PLの導入効果を見据えて、検討している荷主企業も多いのではないでしょうか。
ロジスティクスの改善施策を検討していると必ず目に留まるのが、4PLという概念です。3PLさえ導入すれば課題解決ができるように思えるかもしれませんが、多極化する物流環境を乗り越えるためには、既存の3PLだけでは課題が解決できないことがあります。ここ数年、少子高齢化に伴うトラックドライバーの慢性的な人員不足や、EC市場の拡大による輸送の小口・多頻度化により、物流コストが高騰しています。経営を圧迫するこの現状に対し、荷主企業は、ロジスティクス単体の施策だけでは、問題解決できないことを認識し、サプライチェーンの最適化による物流コストの削減を求めています。
3PL導入後に発覚しがちな死角
3PLを導入したり、物流業者を変更したりすることで、物流コストは一時的に下がります。しかし、これはあくまで部分最適の結果。サプライチェーン全体の見直しを実施しない限り、根本的なコスト削減は実現できません。3PL体制による改革では物流コスト削減が行き詰まるのは、なぜでしょうか。それは、次の示す理由があげられます。
物流コスト削減の提案がない
一般的に、荷主企業の物流コストを下げた分だけ、3PL業者の売上は下がります。多くはオペレーションを請け負うというビジネスモデル上、利益相反を恐れ、コスト削減に積極的に取り組まない、あるいは取り組めない業者がいることも事実です。また、限られた領域で請け負っているため施策の幅が狭められてしまう実態もあります。3PLの導入によって継続的なコスト削減が望めないのはこのためです。
サプライチェーン最適化が困難
組織体制が原因でサプライチェーン全体の最適化が難しいケースがあります。問題として挙げられることの1つが、部門別独立採算制を導入している組織体制です。全社で一気通貫したプランを立てることが難しく、部分最適にとどまってしまってしまう傾向にあります。また、在庫に関して言えば、製造部門は「コストを抑えるために在庫を持ちたくない」、販売部門は「機会損失を防ぐために在庫を持ちたい」と、相反する考えを持っていることも原因の1つです。
ロジスティクス部門の弱体化
3PL業者に物流オペレーションの全てを委託することによって、自社内に経験値やノウハウが蓄積されにくいという問題があります。その結果、荷主企業の社内には事業戦略に沿った最適なロジスティクス戦略を設計できる人材が育たないまま、3PL業者にのみ知見が貯まっていくことになります。そのため、刻々と変化・複雑化する事業環境や物流環境に対応できるロジスティクス部門の企画力の不足が課題となってきます。
3PLから4PLへ進化させるためには?
3PLを、その発展形である4PLに進化させるためには、利益相反の発生、意思の不統一、ロジスティクス人材の不足など、3PLでは解決できない各種課題を解決する必要があります。
3PLの「利益相反」を解消
「物流コスト削減の提案がない」という課題を解決するには、利益相反関係を解消する必要があります。具体的には、物流コスト削減によって出た効果を、お客様と業者(4PL事業者、3PL事業者)との間で分配するゲインシェアリングのスキームを確立すること、また、サービスレベルの再考により3PL事業者の負荷を下げることなどが挙げられます。これにより、利益相反関係は解消され、3PL事業者からの自主的な物流コスト削減提案が生まれてきやすい土壌を作ることができます。
サプライチェーン全体の見える化
「サプライチェーン全体の最適化が困難」という課題を解決するには、サプライチェーン全体の可視化と、部署横断型の調整が欠かせません。調達物流から販売物流に至るまでのグローバルな在庫量をリアルタイムで可視化し、そしてこれらのデータを基に製造部門・販売部門との折衝を行った上で、欠品や過剰在庫にならないように基準在庫を設定するなど、部門間や会社間での利害関係を俯瞰する視点で調整する必要があります。
ロジスティクス部門の委託化や知見共有
「ロジスティクス部門の弱体化」という課題を解決するには、ロジスティクス戦略の企画部分から外部委託し、4PL事業者を自社のロジスティクス部門として活用する方法と、社内のロジスティクス部門の知見を強化する方法があります。前者は、自社のリソースを本業に集中できるメリットがあり、後者は、パートナーである4PL事業者から4PLの知見を共有されることで自社内にノウハウが蓄積できるメリットがあります。
4PLで中長期的な改善を
3PLから4PLに進化した後も、改善はそこで終わりではなく、中長期的に取り組む必要があります。それは、ロジスティクスを取り巻く環境やビジネス環境は常に変化し、その時最適だったロジスティクス体制も、数年で経年劣化が起こり得るためです。定点的に各種物流KPIを観測しながら、常に物流課題を可視化していく取り組みが大切です。