使用済み段ボールを緩衝材に再利用

地道な活動の積み重ねで環境負荷を軽減

家電製品を管理する物流センターに、使用済みの段ボールから緩衝材を作り出す機械を導入しました。段ボールの再利用で、環境負荷の軽減、廃棄コストや資材調達コストの削減などに成功しています。SDGsの実現に向けた活動の一環として、今後はこの取り組みを他の事業所にも展開していく計画です。

関西支店 支店長 茨木 直樹/蜂須賀 美津子
関西支店 支店長 茨木 直樹/蜂須賀 美津子

廃段ボールを緩衝材にリメイク

SBS東芝ロジスティクスの関西支店は、家電製品の物流管理をメインの業務としています。具体的には、国内外で生産された東芝グループ各社の家電製品や、他メーカー製品の入出荷や輸配送などを担当。拠点は複数メーカーが共同利用して効率化を実現する「家電物流プラットフォーム」として機能し、主に西日本エリアの取引先向けに各種製品を供給しています。

関西支店では、メーカー各社からの納品に伴い、日々、大量の使用済み段ボールが発生していました。それらは無地であったり、損傷がなく強度を担保できたりする状態であれば、出荷用として再利用することも可能です。しかし、その数には限りがあり、関西支店では緩衝材としてロール紙(クッションペーパー)や新聞紙、プラスチック製エアキャップなどを活用してきました。メーカーからの納品時に同梱されている緩衝材の再利用にも取り組んできましたが、不足分の補充などもあり、ロール紙だけで年数十万円の新規購入費が生じていていました。

こうした使用済み段ボールを有効活用していこうと、2021年12月に導入したのが「段ボールシュレッダー」です。この機械は、ビジネス文書などを刻むシュレッダーに似た構造になっており、2本のカッターローラーで上下から挟み込むように段ボールを通すことで、部分的に段ボールを切断して緩衝材を作り出します。関西物流展に出展していたドイツのメーカーが開発したものでした。

「支店として様々な環境対策に取り組んでいく中で、展示会のブースで『段ボールシュレッダー』のデモンストレーションをみて、とても魅力的な設備だと感じました。環境面で先行している欧州を中心に、近年需要が高まっている機械だと聞いて、すぐにメーカーから提案を受け、導入を決めました」(関西支店の茨木直樹支店長)。

段ボールを段ボールシュレッダー(裁断機)に投入しているところ
段ボールを段ボールシュレッダー(裁断機)に投入しているところ
裁断された段ボールが出てきているところ
裁断された段ボールが出てきているところ

納品先からのクレームはゼロ

関西支店では、段ボールシュレッダーが作り出す緩衝材を、電池や電球といった小物家電製品の梱包時に使用しています。段ボール由来の緩衝材は、従来使用していた緩衝材と比べても品質や強度面で遜色がありません。

機械は段ボールを裁断する際に多少の屑を出します。しかし、それをこまめに取り除けば、梱包物の中に混入する心配もありません。作業現場も日課である1日1回の掃除で常に綺麗な状態を維持できます。さらに、導入した機械は卓上タイプであるため、物流現場の省スペース化につながったり、移設が容易であったりするなど、使い勝手がいいという特徴があります。

現在、段ボールを再利用した緩衝材は、電材系の代理店や東芝ストアなどに供給する製品の梱包時に使用しています。現在のところ、代替したことに対して納品先からのクレームは発生していません。そのため、今後は使用対象を家電量販チェーンの店舗向けや家電以外の製品群にまで拡げていきたい考えです。

「例えば、家電量販チェーン向けの一括物流センターとして機能する当社の拠点では、店舗納品に通い箱(折り畳みコンテナ)を使っていますが、その中に入れる緩衝材としての活用も検討しています」(茨木直樹支店長)。

社内のエコ活動をリードする関西支店

今回、段ボールシュレッダーの導入に踏み切った関西支店では、これまでも様々な環境対策に取り組んできました。事務処理業務のペーパーレス化推進による紙使用量の削減に成功しているほか、例えば、デスクワークなどで使用するペン(ボールペンなど)については、ペン本体を備品庫にストックするのではなく、替芯のみを用意することで、プラスチック類の廃棄減につなげています。

また、前述した「ベンダー各社による納品時に受け取った段ボールの再活用」も関西支店が管轄する各倉庫での徹底を図っています。さらに、テープを必要とせずに封函できる段ボール(テープ不要段ボール)の導入なども進めてきました。

これまでに展開してきた一連の“エコ活動”において中心的な役割を果たしてきたメンバーの一人で、同支店で環境関連業務を担当する蜂須賀美津子さんは、「(プライベートで)約15年間、自然観察指導員・育成委員として活動していく中で、環境保全の重要性を改めて認識することができました。環境対策への取り組みは、職場での日々の細かい努力の積み重ねだったり、ちょっとしたアイデアを具現化していったり、スタッフ全員が環境を意識しながら行動していくことがとても大切です」と説明します。

スタッフの意識改革もさることながら、実際の活動によってどのような成果が上がっているのか。それを定量的に把握・共有していくことがエコ活動継続のモチベーション維持に直結します。実際、関西支店では管轄する各拠点から紙の使用量などを毎月報告してもらうルールを設けています。

「ムダをなくす。もったいない。まだ使える、といった意識や感覚がスタッフ一人ひとりに浸透していくと、エコ活動はうまくいきます。少し乱暴な言葉になってしまいますが、『ケチな性格』である人のほうが地球環境にはやさしいと言えます(笑)」(蜂須賀さん)

蜂須賀さん

大阪市環境局から表彰

こうした関西支店のエコ推進活動は、社内のみならず、関係各所からも高く評価されています。大阪市ではゴミの減量につながる取り組みを継続実施している建築物の所有者や管理者に「ごみ減量優良標」を贈呈していますが、関西支店はこれを過去に4回授与されています。さらに、2021年10月には「令和3年度大阪市環境局長表彰」を受賞しました。

受賞理由について、茨木支店長は「使用済みのストレッチフィルムを、ラベルをきちんと剥がしてから分別するなど各物流現場が地道な環境保全活動を続けてきたことや、段ボールの再利用や廃棄量減が評価されたのではないか」と分析しています。

もっとも、今回の受賞は決してゴールではありません。支店や社内にとどまらず、家電業界全体を見渡せば、環境面で解決すべき課題がまだ残されています。例えば、ケース(外箱)不良による荷受け拒否はそのうちの1つです。中身の製品にはまったく問題がないにもかかわらず、ケースに少しの傷や汚れがあると、返品・交換を余儀なくされる商習慣は環境対策の観点からも再考していく必要があるでしょう。そもそもケースは中身を守るために用意するものであるからです。

個々の企業や事業所単位での取り組みを通じた成果には限界があります。メーカー、卸、小売り、消費者、物流会社といったサプライチェーンを形成するプレーヤーたちが一体となってエコ活動を推進していけば、よりムダのない、環境にやさしい仕組みを構築できるはずです。

「家電物流プラットフォーム」を運用するとともに、エコ活動で先行している関西支店には、家電サプライチェーン全体の環境負荷軽減を実現していくうえで、強いリーダーシップを発揮していくことが求められています。

関西支店 支店長 茨木 直樹/蜂須賀 美津子

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